堺市の「百舌鳥・古市古墳群」は古墳時代最盛期の古代日本の王たちの墓が集中していることから、世界遺産に登録されています。
それらの古墳は、前方後円墳、帆立貝形墳、円墳、方墳といった日本独自の様式で造られており、そのデザインは世界的にも独特だそうです。
特に仁徳天皇陵はクフ王の大ピラミッドや秦の始皇帝陵をも超えて、世界最大の墓とされています。
僕はJR百舌鳥で降りてそこから一周しましたが、全長486メートルもあり、また体積は140万立方メートルもあるそうです。
王たちは自らの権力を誇示するためにも、墓を大きく造る必要がありました。
実際に歩いてみると、いかに大きいのかがよく分かります。
東大阪市には、「竜馬がゆく」や「坂の上の雲」といった作品で知られる国民作家司馬遼太郎の記念館があります。
JRを使うと河内永和駅が最寄り駅で、ここから歩いて20分ほどかかります。
向かう途中の道で、司馬が小学校の国語の教科書のために書き下ろした「21世紀に生きる君たちへ」の文学碑がありました。
「君たちは、いつの時代でもそうであったように、
自己を確立せねばならない。―自分に厳しく、相手にはやさしく。という自己を。そして、すなおでかしこい自己を」
ここまで簡潔に分かりやすく、人の胸を熱くする文章があるでしょうか。
難解な作品を多く残している司馬遼太郎ですが、その主張の根幹は「自分をしっかりと持つこと」、そして「他人や社会に対して優しい人間でいること」にありました。
僕は学生の頃から司馬遼太郎の愛読者で、僕が最も影響を受けた人物です。
彼の描く主人公たちは賢く合理的で、かつ海のような広い心を持っています。
彼の小説は、まさに僕が生きていくうえでの羅針盤となりました。
彼が描く主人公は共通して単純明快な生き方をしています。
みんな自分の信念とか目的のために生きていて、それと関係のないことにはあまり興味がないのです。
だからくだらない私欲にとらわれることもないし、明確な目的があることで歴史に残る偉業も残せたのだと納得できます。
司馬遼太郎記念館の入り口に着くと、そこから少し庭を歩いてから大きな建物が見えてきます。
その途中司馬の書斎がありますが、これは再現ではなく本物をそのまま残しているそうです
中は撮影禁止なので写真はないですが、空間を覆うように巨大な本棚が並んでいます。
そこには、人間が一生でこんな量の本が読めるのかと疑いたくなるくらいの蔵書が並べられています。
本の種類も歴史に関するものだけでなく、哲学、文学、辞典、生活に関するものなどさまざまで、司馬文学が単なる歴史の知識だけでなく、豊富なジャンルと膨大な知識で構成されていることが分かります。
彼は小説が有名ですが、他にも評論や対談集など多分野の本を出しています。
彼を単に歴史作家とくくってしまうのは、あまりに狭いとらえ方かもしれません。
多くのジャンルに跨って、過去のことだけでなく未来のことまで言及しているその執筆範囲は、司馬遼太郎という1つのジャンルを築いたといえます。